「私の作る真珠は、人の涙の結晶だ」
これは失礼
真珠王と呼ばれた男の言葉を思い出していました
16世紀の大航海時代 貴金属やスパイスを求めて人類は世界へ船出したという話は良く聞きますが
実は海中に眠る財宝も探していたという話はあまり知られていません
人魚の涙
とも呼ばれるそれは
そう
真珠です
古くから様々な民族がありとあらゆる海へと探し求めてきました
時に国家間の交易品として扱われ、時に権威や富の象徴として扱われます
大航海時代のスペイン国王は、コロンブスが海に出る際に真珠を持ち帰ってくるようにと契約を交わし
ポルトガルのバスコ・ダ・ガマは真珠の見本を持って探しまわり航海していたとまで記されています
過去には侵略や奴隷を使っての探索など悲劇的な面もあります

それ程までに真珠が人類を魅了し続けてきたのは一体なぜなのでしょうか
真珠層の均一性、表面の滑らかさ、内側から輝くような光沢といった美しさからくる理由はもちろんでしょう
しかし
実は、真珠というのは世界にも限られた海域しか無く
海域を見つけてもそこから深い海へ潜る危険性もあり
海中に到達したからといえど一万個に一個あるかないかという世界
その希少性と入手高難度こそ真珠の価値の姿なのかもしれません
天然の真珠というのは、 アコヤ貝 の中に何かのひょうしで異物が入り込み、異物から身を守るために層を形成した末に誕生すると言われています
まさに偶然の偶然が層を成した自然の産物なのです
しかし
そんな自然の産物を
人魚の涙を
信じ難いですが
作り出すことに
成功した
人物が
い
ま
す
作り出したと言ってもガラスパールやプラパール等のイミテーションパールではありません
驚愕です
何と
養 殖 に よ っ て で す
人類史上初の偉業を達成したその人物の名は
− MIKIMOTO −
もうお気付きかとは存じますが
紛れもない三重県鳥羽市出身の日本人です
彼は
一般人には手に入らなかった高価な真珠を養殖によって作り出す事に成功したのです
もちろん、この人類史上初の偉業はもちろん生半可なものではありませんでした
丹精込めて育ててきた貝の赤潮による全滅
貝の体内の核が丸みをおびる為の年月
最後まで育ってくれる僅かな確率
層が厚くなりすぎる事で歪むリスク
寄せては返すような everyday LIFE
Trial & error dicrotic WAVE
人生を賭けた FARM RAISED PEARL
余談ですが人生を 賭ける という字は貝を差し出す者
努力の 賜物 という字にも貝の価値が記され
物を 購入 するにも貝が必要
3000年も昔、お金の始まりは貴重な貝だったと言われています
そんな漢字にも使われてきた貝の歩みに新たな一層を刻む日本人の挑戦でした
MIKIMOTO はついに
養殖真珠を成功させ、その名は一気に世界中の海へと轟き渡ります

しかし
成し遂げた大功績に安堵をつくのも束の間
今度はパリからの圧力によりそれは偽物だと訴えられてしまいます
そこから更に何年にも及ぶ長く苦しい裁判ののち
『 MIKIMOTO ノ ヨウショクシンジュ ハ テンネンシンジュ ト カチ オナジ オナジ カチ MIKIMOTO ゼンメン ショウソ 』
この判決は
海へ出ていた猛者たちを養殖へと駆り立てました
世はまさに 大 養 殖 時 代

「私の真珠は人の涙の結晶だ」
真珠王と呼ばれるようになる男は
この時すでに66歳となっていました
全面勝訴判決を聞いた時 MIKIMOTO は大粒の涙を流したと言います
この結晶なければ私たち一般人は真珠を拝むことすら叶わなかったかもしれません
挫折と苦境により重なった歳月と努力の層
海と人間の融合
賜物が流した涙
それはMIKIMOTO 自身が人魚となった瞬間だったのかもしれません

今回
インテリアにまつわるのブログでありながら真珠の話、失礼しました
実は
このMIKIMOTO
やがてインテリア業界においてもよく知られる人物となっていきます
その話は次の機会に
では また dicrotic WAVE 、、